大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 平成2年(ワ)262号 判決

原告

是友京介

ほか一名

被告

吉岡武文

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して

1  原告是友京介に対し、金四二六六万六一八八円及び内金三九六六万六一八八円に対する昭和六二年九月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を

2  原告是友靖彦に対し、金三三八万円及び内金三〇八万円に対する昭和六二年九月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を

各支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告らの、その三を被告らの、各負担とする。

四  この判決の主文第一項1、2は、仮に執行することができる。

事実及び理由

以下、「原告是友京介」を「原告京介」と、「原告是友靖彦」を「原告靖彦」と、「被告吉岡武文」を「被告吉岡」と、「被告甲南交通株式会社」を「被告会社」と、各略称する。

第一請求

被告らは、連帯して

一  原告京介に対し、金六六八八万二五九五円及び内金六三八八万二五九五円に対する昭和六二年九月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を

二  原告靖彦に対し、金四五〇万円及び内金四二〇万円に対する昭和六二年九月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を

各支払え。

第二事案の概要

本件は、事業用普通乗用自動車(タクシー)と衝突した自家用自動二輪車の運転者が、右衝突により負傷したとして、また、右自動二輪車の運転者の父も右運転者の右負傷に基づく損害を被つたとして、右普通乗用自動車の運転者に対し民法七〇九条に基づき、右普通乗用自動車の保有者に対し自賠法三条に基づき、それぞれ損害の賠償を請求した事件である。

一  争いのない事実

1  別紙事故目録記載の交通事故(以下、本件事故という。)の発生。

2  被告吉岡、被告会社の本件責任原因(被告吉岡につき過失。民法七〇九条所定。被告会社につき本件事故当時における被告車の保有。自賠法三条所定。)の存在(ただし、被告吉岡における右過失の具体的内容は、後記認定のとおりである。)。

3  原告京介が本件事故により受傷したところ、右受傷が症状固定して現在後遺障害が残存している事実。

原告京介の右後遺障害が自賠責保険金請求手続において障害等級四級(併合)の認定を受けた事実。

4  本件事故発生には、原告京介の過失も寄与していた事実。

二  争点

1(一)  原告京介の本件受傷の具体的内容及びその治療経過。

(二)  特に、原告京介の本件後遺障害の具体的内容及びその程度

(1) 原告京介の主張

第一次主張

原告京介の本件後遺障害の内容は、両下肢不全麻痺、膀胱直腸障害等である。しかして、右後遺障害の中心は、両下肢不全麻痺である。原告京介には、右後遺障害のため、両下肢について広汎に知覚脱出、知覚鈍麻が認められ、かつ、運動機能面から見ても、足指、足関節は全く自動運動不能であり、膝関節、股関節の筋力低下も著しく、常時車椅子の使用を不可欠とし、短下肢装具、ロフストランドクラツチを使用しても大振り歩行が短い距離で可能な程度で、自力での実用的移動は不可能である。

確に、原告京介の両下肢麻痺は完全麻痺と評価されていない。しかしながら、同人の両下肢不全麻痺は、同人の脊髄が完全に又はこれに近い程度に損傷された場合に生じる腸管機能障害、生殖機能障害も伴つているものであるから、完全麻痺に極めて近い脊髄損傷に基づく高度の障害に他ならない。

元々脊髄損傷による後遺障害は、種々多様な障害が発生する重度のものが多いことから、その評価は総合的になされるべきである。

よつて、原告京介の右後遺障害は、両下肢の用を全廃したもの、あるいは、これに近く又はこれに準ずるものとして、障害等級一級八号に該当するというべきである。

第二次主張

仮に、右第一次主張が認められないならば、第二次主張として、次のとおり主張する。

原告京介の本件後遺障害中両下肢不全麻痺は、第一次主張において主張したとおり同人の日常生活動作において、少くとも随時介護を要する状態にあり、障害等級二級三号に該当する。同じく膀胱直腸障害は、これを単独で評価すると、胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外に服することができないとする障害等級五級三号か、少くとも胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務以外の労務に服することができないものとして障害等級七級五号に該当するものである。同じく生殖器機能障害は、少くとも生殖能力に著しい制約のあるものであつて、性交不能を来たすものとして、障害等級九級一六号に該当する。同じく体幹中背柱の変形障害は、障害等級一一級七号に該当する。

しかして、自賠責保険における障害等級認定基準によれば、障害等級五級以上に該当する後遺障害が二つ以上ある場合は、重い方の等級を三級繰り上げ、同八級以上に該当する後遺障害が二つ以上ある場合には重い方の等級を二級繰り上げ、同一三級以上に該当する後遺障害が二つ以上ある場合には、重い方の等級を一級繰り上げることになつている。

原告京介の本件後遺障害は、右認定基準によれば、いかように併合しても、障害等級一級に相当する。

(2) 被告らの主張

原告京介の主張事実は全て争う。

同人の本件後遺障害は、神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの(障害等級五級二号該当)と背柱に奇形を残すもの(同一一級七号該当)とであり、その障害等級は、併合四級該当である。

2  原告らの本件損害の具体的内容

特に争点となる損害費目

原告京介の主張

(一) 将来の付添看護料 金三九五七万三三〇〇円

(1) 原告京介の本件後遺障害の具体的内容及びその程度は前記のとおりである。

したがつて、同人は、右後遺障害により日常生活動作に多大の制約を余儀なくされている。同人は、現在自らの努力により一定の移動や動作をなし得るが、それは、同人の上半身の筋力が二〇代のものであることから車椅子、ロフストランドクラツチ等を使用してなし得るのであつて、同人の上半身の筋力が年齢的におとろえてきた場合、到底現在と同程度の生活を維持することはできない。同人の父である原告靖彦が高齢になつた場合、原告京介の日常家事処理を世話する者がいない状態となり、原告京介が単身で買物、調理、清掃等を行うことは到底不可能である。同人は、現在でも、身障者用設備のない施設への出入り、段差や階段のある場所への移動には介護者を不可欠としている。これらの事情から、将来的には原告京介に対する他人の介護の必要度が一層増大することが明らかである。

(2) 右事情に鑑み、原告京介には将来の付添介護料を必要とするところ、一日当たりの介護料は、少くとも金四〇〇〇円を必要とする。

しかして、原告京介は、本件症状固定時一七歳であつたから、その平均余命は、五九・二六歳(昭和六三年簡易生命表による)である。

そこで、右各事実を基礎とし、同人の将来の付添介護料の現価額を算定すると、金三九五七万三三〇〇円となる(新ホフマン係数は、二七・一〇五。)。

4,000円×365×27.105=3,957万3,300円

(二) 後遺障害による逸失利益 金四八六七万五六二五円

(1) 原告京介の本件後遺障害の内容及びその程度は前記のとおりである。

したがつて、同人の労働能力喪失率は、一〇〇パーセントである。

(2) 同人は、本件症状固定時一七歳(本件事故当時中学校卒業後)であつたが、現代の高学歴化社会において健常者であれば中学校卒業後少くとも定時制高校へ進学するのが常態であるから、原告京介の場合も、その例外でないというべきである。

したがつて、同人の本件後遺障害による逸失利益算定の基礎収入は、平成元年版賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・男子労働者新高卒一八歳の平均賃金年額金二〇四万九五〇〇円とすべきである。

(3) 原告京介の就労可能年数は、四九年である。

(4) 右各事実を基礎資料として、原告京介の本件後遺障害による逸失利益の現価額を算定すると、金四八六七万五六二五円となる(新ホフマン係数は、二三・七五〇。)。

204万9,500円×100/100×23.750=4,867万5,625円

(5) なお、原告京介は、現在フルノ電機株式会社に勤務し、一か月の基本給金一三万円、手取り額約金一二万円を得ている。

しかし、右職場は、玉津福祉センター付属病院の紹介による、身障者の社会復帰訓練に協力している特別の企業であつて、特殊なトイレ等を備え、車椅子に乗つた軽作業のみの身障者を雇用しているところである。いわば社会福祉事業の一貫に位置する職場で、原告京介にとつての職場としての代替性はないかあるいはその可能性は極めて乏しい。同人は、同人の特別の努力によつて一時的に右収入を得ているに過ぎない。これらの事情から、同人の右一時的就労状況は、同人の客観的な労働能力の喪失に消長を及ぼすものでない。

被告らの主張

(一) 原告京介の将来の付添介護料について

原告京介の主張事実中同人に現在本件後遺障害そのものが残存していることは認めるが、その余の主張事実は全て争う。

同人には、現在介護の必要がほとんどない。同人に介護者を要するのは、階段の昇降の際だけである。この点の介護については、原告靖彦において家屋改造費を本件損害として請求しているのであるから、それ以上の介護料は不要というべきである。

(二) 原告京介の本件後遺障害による逸失利益について

原告京介の主張事実中同人に現在本件後遺障害そのものが残存していることは認めるが、その余の主張事実は全て争う。

仮に、同人に本件後遺障害による逸失利益が認められるとしても、右逸失利益算定の基礎収入は、同人が中学校卒業である以上、昭和六二年賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計の男子労働者小学・中学卒一七歳の平均年収金一四五万九二〇〇円とすべきである。

又、仮に、同人の本件労働能力の喪失率が、同人主張のとおり一〇〇パーセントであるとするのならば、同人の主張する、同人がフルノ電機株式会社に勤務して得た、そして将来得るであろう給与・ボーナスの少くとも一〇年分は損益相殺すべきである。

右一〇年間としたのは、同人がまだ二〇代の若年であり体力気力に満ちている点及び現に同人が車椅子でバスケツトボールやマラソンに親しんでいる事実から、同人において、少くとも一〇年間の就労は可能だからである。

しかして、同人が右会社から得ている給与月額金一三万円、ボーナスが年二回四か月分として金一三万円の一六か月分の年額は金二〇八万円となるところ、その一〇年分金二〇八〇万円を損益相殺すべきである。

3  過失相殺における原告京介の過失割合

4  損害の填補

ただし、原告京介において、同人が本件事故後自賠責保険金金一二〇万円(傷害分)、同金一六三七万円、合計金一七五七万円を受領したことを自認している。

第三争点に対する判断

一1  原告京介の本件受傷の具体的内容及びその治療経過

(一) 証拠(甲一ないし五、証人高田。)によれば、次の各事実が認められる。

(1) 原告京介の本件受傷の具体的内容

第一二胸椎圧迫骨折、脊髄損傷、右下腿(右脛骨骨幹部)骨折、坐骨骨折、後頭部挫傷。

(2) 同人における右受傷の治療経過

関西労災病院

昭和六二年九月五日から昭和六三年五月二日まで入院(二四一日間)。

兵庫県玉津福祉センターリハビリテーシヨンセンター附属中央病院(以下、玉津福祉センターという。)

昭和六三年五月三日から平成元年三月三一日まで同病院附属施設に入所。

症状固定 昭和六三年七月二五日。

2  原告京介の本件後遺障害の具体的内容及びその程度

(一) 原告京介に現在本件後遺障害そのものが残存していることは、当事者間に争いがない。

(二)(1) 証拠(甲一、二、五、検甲三、六、証人高田、原告京介、同靖彦各本人。)によれば、次の各事実が認められる。

(イ) 原告京介は、現在両短下肢装具を着用し自宅の内外を問わず実用性のある移動には常時車椅子を必要とし、車椅子なしで行い得るのは、住宅内における小距離の移動(例えば、車椅子で自宅内に入り、居室である和室に入る際、車椅子を降り座つたまま身体を両手で支え後向きに後退するような形で移動。自宅二階へ上る場合は、階段に後向きに同人の臀部を乗せ身体を両腕で支え一段ずつ臀部を上げて移動し、同じく下る場合は、同じ姿勢で前向きになり同じ方法で移動。)だけである。

同人の車椅子なしでの歩行は、両短下肢装具及び両方のロフストランドクラツチ(肘まで着装し、肘を固定して使用する杖状器具)を使用して、大振り歩行(足を交互に出しての歩行ではなく、両肘のロフストランドクラツチを支点にして、丁度振子のように両足を振つての歩行。)で、しかも、距離一〇〇メートルが限度である。

したがつて、同人は、屋外で、しかも車椅子が入れないような場所への移動(例えば、階段の昇降)は、右歩行方法を採る以外にないが、右場所において独りで右歩行方法を採つた場合、同人において転倒し受傷する可能性がある。同人は、そのため、右場所における右歩行方法には恐怖を感じほとんどこの歩行方法を採つていない。

同人は、現在身障者用特殊自動車の運転免許を有し右自動車の運転ができるので、平地であるならば、車椅子で右自動車の停車場所まで行つて、右車椅子を右自動車に載せ右自動車を運転して目的地まで赴き、右自動車から右車椅子を降ろし右車椅子に乗りあるいは前記ロフストランドクラツチを使用しての歩行により所用を果すことは可能である。

しかしながら、右方法も、前記認定のとおり車椅子による通行可能あるいは最大距離一〇〇メートル以内が条件であり、右条件を欠く場所での所用達成は不可能である。

同人には、尿意便意の知覚が全くなく、基本的には垂れ流しの状態である。即ち、小便は膀胱内に溜まると自然に流出し、大便は、普段でも、特に下痢状の場合は気付かない内に排出されてしまう。ただ、便秘状の場合だけは、仲々排出されず、手で腹部を押え手を上下に運動させ努力して排出させている。

同人には、褥瘡がよく発生し、現在でも座骨に当る個所に一円玉大の褥瘡が発生している。

褥瘡は座位のままでは治らず、悪化すると入院して手術を受ける必要がある。

同人は、右状況下にあるため、掃除洗濯を自力でできず、料理は車椅子で即席ラーメンを作る位しかできない。入浴は、湯舟に入ることはほとんどなく、専らシヤワーを使用している。階段のある店舗での買物は、独力でなし得ない。

(ロ) 原告京介の本件後遺障害に関する医学的見地は、次のとおりである。

(a) 自覚症状

(Ⅰ) 両下肢不全麻痺

原告京介の身体中仙髄の領域(両足部の外側、即ち小指側から両足の裏側、さらに臀部にかけての部分。)が、知覚脱出あるいは消失(触わつても全く分からない状態)、腰髄の領域(両下腿の内側半分)が、知覚鈍麻(触わつた感じが正常よりも鈍いが、触わつているのは何となく分かる状態)になつている。

(Ⅱ) 膀胱・直腸障害

原告京介の身体中膀胱括約筋等が麻痺しているため、腹圧がかかつたりすると尿漏れを生じる等極めて尿漏れを起し易い状態にある。勿論、同人において排尿を自分の意思で制御することは不可能である。同人には、正常な便意がなく、尿排出の場合と同じく便排出分場合も、自分の意思でこれを制御することができない。

(Ⅲ) 右(Ⅰ)(Ⅱ)の後遺障害は、いずれも、原告京介の本件受傷中第一二胸髄損傷に起因する後遺障害である。

(b) 他覚症状

(Ⅰ) 膀胱・直腸障害

(Ⅱ) 両下肢筋力低下

両足指の背屈、底屈は筋力的に零(筋の収縮も見られない状態。以下同じ。)。

両足関節の背屈、底屈も零。

両膝関節は、伸展右三・左マイナス四、屈曲右左とも二(正常は、五。以下同じ。)。

両股関節は、伸展右左とも一、屈曲右左とも三、外転右左とも二、内転右左とも三。

(ただし、平成二年一月一六日現在の筋力テスト結果。)

右筋力テストの結果から、原告京介は、自力で何も支えがなく無装具で歩行することは不可能な状態にあり、特に、足関節から先については、運動機能が全く存在しない。

(Ⅲ) 第四腰髄以下の痛覚消失知覚鈍麻

右下腿以下の痛覚が全く存在せず、知覚(触覚)のみが鈍麻である。

(Ⅳ) 右(Ⅰ)ないし(Ⅲ)の後遺障害は、いずれも前記(a)(Ⅲ)と同じである。

(c) 脊柱の障害

第一二胸髄の脱臼骨折(ただし、レントゲン検査上の病名。)

(d) 関節機能障害

股 伸展 他動右左とも零度、自動右左とも零度

屈曲 他動右左とも一二〇度、自動右左とも一二〇度。

内転 他動右左とも二〇度、自動右左とも二〇度。

外転 他動右左とも三〇度、自動右左とも三〇度。

膝 伸展 他動右左とも零度、自動右左とも零度。

屈曲 他動右左とも一三〇度、自動右左とも一四〇度。

足 自動運動不能

(e) 原告京介の右後遺障害は、回復の見込みがなく、前記(a)、(b)の障害についても、終生現状の改善の見込みがない。

(f) 原告京介が身障者用特殊自動車を運転すること自体は、同人の身体に大きな犠牲を強いるということはないが、長時間座位の姿勢を続けることは、褥瘡を発生せしめる原因となるし、第一二胸髄損傷によつて腹筋背筋が極めて脆弱化している関係上、腹部内臓への圧迫を生じ、同人の身体に悪影響を及ぼすことになる。

なお、同人には、現在既に褥瘡が存在する。

(g) 両下肢を膝関節以上で失つたもの、即ち両大腿切断の場合であつても義足を使用すれば歩行は可能であり、場合によつては建設現場で就労し得る事例もある。

両大腿切断の場合の通常障害と原告京介の本件両下肢障害とをその日常生活動作面で比較した場合、原告京介の受ける制約の方が大である。

(h) 右(a)ないし(f)の各認定事実を総合すると、医学的に見て、原告の本件後遺障害の程度は、両下肢の用を全廃したものに該当とするのが相当である。

(2) 原告京介の本件後遺障害の具体的内容は、右(1)(イ)、(ロ)(a)ないし(e)で認定したとおりであるところ、右認定にかかる同人の本件後遺障害の具体的内容に同(ロ)(f)ないし(h)の各認定事実、特に同(h)の医学的見地を合せ考えると、同人の右後遺障害の程度は、その法的評価の面においても、両下肢の用を全廃したものに該当(障害等級一級八号相当)すると認めるのが相当である。

(三) よつて、原告京介のこの点に関する第一項主張は、理由がある。

右認定説示に反する被告らの主張は、当裁判所の採るところでない。

3  原告らの本件損害の具体的内容

(一) 原告京介関係

(1) 治療関係費

(イ) 治療費 金五六万八六一〇円

(a) 原告京介の本件受傷の具体的内容及びその治療経過は、前記認定のとおりである。

(b) 証拠(甲二三の一ないし八)によると、原告京介の関西労災病院における治療費中金五六万八六一〇円が同人負担分であることが認められる。

よつて、右金五六万八六一〇円は、本件事故と相当因果関係に立つ損害(以下、本件損害という。)というべきである。

(c) 原告京介は、玉津福祉センターにおける治療費中同人負担分として金一〇万五三一五円を主張請求している。

しかしながら、同人の右主張事実は、これを認めるに足りる証拠がない。

とり分け、同人の玉津福祉センターにおける治療期間及び本件症状固定日は前記認定のとおりであるところ、右認定各事実からすると、同人の右病院における治療費中右症状固定日以後の治療は同人の本件後遺障害に対する治療となり、その治療費は、右症状固定日以前の治療費と損害としての性質を異にし、両者区別されねばならない。

しかるに、同人の右主張請求治療費については、右区別に関する主張・立証がない。

(ロ) 装具費 金二〇万九二〇〇円

(a) 原告京介の本件受傷内容及び治療経過、本件後遺障害の具体的内容は、前記認定のとおりである。

(b) 証拠(甲一五の1、2、一六、一七の1、2、一八、一九の1、2、二〇、原告靖彦本人。)によれば、原告京介は、本件受傷の治療過程で、胸椎用装具型C―四フレーム、両短下肢用装具、両短下肢装具F―二硬性を必要とし、その費用合計金二〇万九二〇〇円を支出したことが認められる。

(2) 入院雑費 金三九万円

(イ) 原告京介の本件治療期間、本件症状固定日等は前記認定のとおりであるところ、右認定事実に基づき、同人の本件事故と相当因果関係に立つ入院期間は、入院開始日の昭和六二年九月五日から本件症状固定日の昭和六三年七月二五日までの三二五日と認める。

(ロ) 右認定事実に基づき、本件損害としての入院雑費は、右入院期間中一日当たり金一二〇〇円の割合による合計金三九万円と認める。

(3) 紙おむつ費 金三五四万円

(イ) 原告京介の本件後遺障害の具体的内容及びそれに基づく日常生活動作上の制約、特に排尿排便の状況は、前記認定のとおりである。

しかして、証拠(証人高田)によれば、原告京介には常時おむつが必要であることが認められる。

右認定各事実に基づけば、原告京介にはその日常生活上終生おむつを必要とし、したがつて、右おむつ費用も本件損害に当たるというべきである。

(ロ) 証拠(甲五、八、原告京介本人、弁論の全趣旨。)によれば、原告京介は本件症状固定時一七歳であつたことが認められるところ、同人の平均余命は五九・二六歳(昭和六三年簡易生命表)であること、同人は、現在毎日一日当たり紙おむつ四・五枚を必要としていること、右紙おむつ一枚の単価が金四六円であること、したがつて、その年額は少く見積つても金六万円になることが認められる。

(ハ) 右認定各事実を総合すると、本件損害としての紙おむつ費用は、原告京介の主張範囲内の金三五四万円と認めるのが相当である。

なお、右損害については、今後の貨幣価値下落の可能性を考慮し、中間利息の控除をしないのが相当である。

(4) 将来の付添介護料 金三九五七万二八六二円

(イ) 原告京介の本件後遺障害の具体的内容、同人が右後遺障害によつて受ける日常生活動作上の制約、同人の本件症状固定時における年齢、同人の平均余命等は、前記認定のとおりである。

(ロ)(a) 右認定各事実を総合すると、原告京介には将来の付添介護料が必要というべく、右費用も本件損害と認めるのが相当である。

(b) しかして、右費用は、同人の主張にしたがい一日当たり金四〇〇〇円と認めるのが相当である。

そこで、右認定各事実を基礎として、同人の右費用の現価額をホフマン式計算方法に則り算定すると、金三九五七万二八六二円となる(新ホフマン係数は、二七・一〇四七。)。

4000円×365×27.1047=3957万2862円

(ハ) 被告らは、原告京介に現在介護を必要とするのは階段の昇降の際だけであり、この点については原告靖彦において家屋改造費を請求しているからそれで足り、原告京介につき、それ以上の将来の付添介護料は不要である旨主張する。

しかしながら、被告らの右主張は、原告京介の本件後遺障害の具体的内容、同人のそれによる日常生活動作上の制約に関する前記認定各事実に照らして理由がないことが明らかである。

(5) 本件後遺障害による逸失利益 金四六七八万五一二五円

(イ)(a) 原告京介の本件症状固定の日時、同人本件後遺障害の具体的内容及びその程度、同人がそれによつて受ける日常生活動作上の制約、同人の本件症状固定時の年齢、同人の平均余命等は、前記認定のとおりである。

(b) 右認定各事実を総合すると、原告京介は、現在、本件後遺障害によりその労働能力を喪失し、経済的損失、即ち実損を被つていると認められ、したがつて、同人に本件損害として、右後遺障害による逸失利益の存在を肯認すべきである。

しかして、同人の本件労働能力の喪失率は、前記認定の各事実を主とし、これに所謂労働能力喪失率表を参酌し、一〇〇パーセントと認めるのが相当である。

なお、同人の現在における就労と右労働能力喪失率との関係は、後記認定説示のとおりである。

(ロ)(a) 証拠(乙一)によれば、原告京介は、昭和四五年一〇月一三日生(本件症状固定時一七歳七か月過ぎ)の男子であるが、昭和六一年三月中学校を卒業後、本件事故までの間、会社員や作業員、喫茶店のウエイター、日雇い人夫等の職を転々とし、右事故当時は無職であつたことが認められる。

なお、同人の本件事故直前の収入については、これを認めるに足りる証拠がない。

(b) 原告京介の本件逸失利益算定の基礎収入は、右認定各事実に基づくと、平成元年賃金センサス産業計・企業規模計・産業計・学歴計男子労働者一八歳の平均賃金年額金一九六万九九〇〇円と認めるのが相当である。

(c) 原告京介の就労可能年数は、四九年と認めるのが相当である。

(ハ) 右認定各事実を基礎として、原告京介の本件後遺障害による逸失利益の現価額をホフマン式計算方法に則り算定すると、金四六七八万五一二五円となる(ただし、新ホフマン係数は、同人の主張にしたがい二三・七五〇。)。

196万9900円×100/100×23.750=4678万5125円

(ニ)(a) 証拠(原告京介、同靖彦各本人、弁論の全趣旨。)によれば、原告京介は、平成二年三月から、玉津福祉センターの紹介でフルノ電機株式会社に勤務していること、同人は、自宅と右会社間を前記身障者用特殊自動車を運転し、右会社又は自宅に到着すると車椅子に乗り換えて通勤していること、右会社の勤務内容は、机に座つてはんだこてを使い機械を組立てるものであること、同人が右会社から得る月収は、基本給金一三万円、手取り約金一二万円で、他に賞与をも受けることが認められる。

右認定各事実に照らすと、原告京介の本件労働能力の喪失率に関する前記認定説示は、同人の右現状と矛盾するかの如くである。

しかしながら、証拠(原告靖彦本人、弁論の全趣旨。)によれば、原告京介が勤務している右会社は、特に身障者の社会復帰に協力している企業であり、職場に身障者用トイレ等も設備されていること、したがつて、右職場に就労するのは身障者であつて、その作業内容も、前記認定にかかる、原告京介の従事作業と同一であること、原告京介は、同人の懸命な努力によつて右勤務を持続していることが認められ、右認定各事実に原告京介の身体的条件、即ち、同人が長時間座位の姿勢を続けることは同人に褥瘡を発生せしめる原因となり、又腹部内臓を圧迫してその面でも同人の身体に悪影響を及ぼすことを合せ考えると、原告京介が右会社から得る収入は福祉政策的性質のものであつて、健常者が通常の労務の対価として得る収入とはその性質を異にし、しかも、原告京介にとつて、右会社における作業従事は、同人の懸命な努力にもかかわらず一時的なものであつて、しかも代替性のないものといわざるを得ない。

右認定説示に基づくと、原告京介の右就労は、全体として健常者の就労と別異のものというのが相当である。

したがつて、前記認定説示にかかる、同人の本件労働能力の喪失率は、健常者との比較による客観的基準によるものである故、右認定説示は、同人の右一時的就労によつて左右されないというべきである。

(b) 被告らは、原告京介が右会社によつて得る収入の一〇年間分を損益相殺すべきである旨主張する。

しかしながら、右(a)の認定説示に照らすと、被告らの右主張に理由がないことが明らかである。蓋し、被告らの右主張は、原告京介の右収入も、健常者が就労の対価として得る報酬と同一性質のものであることを前提としており、右前提に理由がないことは、右認定説示から明らかだからである。

確かに、証拠(甲五、原告京介本人。)によると、同人が車椅子によるバスケツトボール競技やマラソン競技に参加していることが認められる。

しかしながら、一方証拠(甲五、弁論の全趣旨。)によれば、同人が右各競技に参加したのは、同人に対するリハビリテーシヨンの一環として、医師の診断検査の下で行われたものであることが認められ、右認定事実に基づくと、同人の右各競技への参加は、同人の治療手段もしくは本件後遺障害の現状維持あるいは悪化防止の手段として行われたと認めるのが相当である。

よつて、同人の右各競技への参加をもつて、被告らの右主張の支えとすることはできないというべきである。

(6) 慰謝料 金一三〇〇万円

前記認定の本件全事実関係に、証拠(甲一)によつて認められる、原告京介が関西労災病院においてハリントンロツド固定、椎弓切除の各手術、キユンチヤー釘固定手術等の重大な手術を受け、辛うじて生命を取り止めた事実を合せ考えると、同人の本件慰謝料は、金一三〇〇万円と認めるのが相当である。

(7) 原告京介の本件損害の合計額 金一億〇四〇六万五七九七円

(二) 原告靖彦関係

(1) 家屋改造費 金三〇〇万円

(イ) 原告京介の本件後遺障害の具体的内容、同人が右後遺障害によつて受ける日常生活動作上の制約等は、前記認定のとおりであるところ、右認定各事実に基づくと、同人が日常生活を送る本件事故前の家屋は、同人の右後遺障害の内容に適合せず、同人が右家屋で日常生活を送るためには同人の右後遺障害内容にそつて改造する必要があり、したがつて、右家屋改造費も、本件損害というべきである。

(ロ) 証拠(甲一〇の1、2、一一ないし一四、二一、検甲一〇の1ないし9、原告靖彦本人。)によれば、次の各事実が認められる。

(a) 原告靖彦は、原告京介の父であるところ、同人は、児玉工務店に注文し、平成元年二月から同年六月初旬にかけ原告京介との同居家屋を次のとおり改造した。

(Ⅰ) 原告京介が車椅子に乗車して右家屋への出入りを容易にするため、北側入口(勝手口。公道に面している。)から屋内に向けコンクリート床のスロープ及びそれに続く踊り場を新設した。

(Ⅱ) 台所及び一階和室(原告京介の居室)の床を丈夫なものに改造した。

(Ⅲ) トイレ、浴室へも車椅子で出入りできるようにタイル張りに改造した。

(Ⅳ) 原告京介の使用条件に合わせ、台所、トイレ、風呂等に必要な給排水、給湯等の設備を新設した。

(b) 原告靖彦は、児玉工務店に対し、右改造費(ただし、本件事故に起因する分のみ。)として合計金三二五万二六九〇円を支払つた。

しかして、原告靖彦は、右支払金の内金三〇〇万を本件損害として主張請求しているところ、右家屋の右改造新設部分中原告靖彦と同京介との共用部分の存在を考慮すれば、原告靖彦の右主張請求金額を本件損害として肯認するのが相当である。

(2) 原告靖彦固有の慰謝料 金二六〇万円

原告靖彦と同京介との身分関係、原告京介の本件受傷の具体的内容、及びその治療経過、同人の本件後遺障害の具体的内容及びその程度、同人が右後遺障害によつて受ける日常生活動作上の制約等は、前記認定のとおりであるところ、右認定各事実に本件に現われた諸般の事情を総合すると、原告靖彦は、原告京介の父として、原告京介が本件事故によりその身体を害されたため、同人が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けたと認めるのが相当であり、したがつて、本件においては、原告靖彦固有の慰謝料を肯認すべきである。

しかして、右慰謝料額は、前記認定の本件全事実関係に基づき、金二六〇万円と認めるのが相当である。

(3) 原告靖彦の本件損害の合計額 金五六〇万円

4  過失相殺における原告京介の過失割合

(一) 原告京介にも本件事故発生に対する過失が寄与していることは、当事者間に争いがない。

(二) そこで、原告京介の過失割合について判断する。

(1) 証拠(甲六、乙一、二、原告京介、被告吉岡各本人、弁論の全趣旨。)によると、次の各事実が認められる。

(イ) 本件事故現場は、東西道路(車道幅員九・二メートル、北側歩道幅員二・二メートル、南側歩道幅員三・三メートル。)と南東から北西へ通じる道路(南東側道路の幅員五・二メートル。歩車道の区別はない。北西側道路の幅員五メートル。歩車道の区別はない。)が交差する、信号機の設置されていない交差点(以下、本件交差点という。)内である。

右交差点を構成する各道路は、平坦な直線状(ただし、東西道路は、右方へややカーブしている。)アスフアルト舗装路であり、右交差道路の内南東側道路及び北西側道路の右交差点入口路上に、一時停止線及びその後方に「とまれ」なる大文字が、それぞれ表示されている。又、一時停止の標識が、右交差点の北東角(北西道路関係)及び南西角(南東道路関係)に、それぞれ設置されており、右各標識の認識は容易である。

右交差点は、市街地(住居地域)に位置し、右東西道路は市道山手幹線で交通量が多いが、南東から北西へ通じる道路の交通は閑散である。

なお、右交差点附近の速度制限は、時速四〇キロメートルである。

右交差点の南東角には、マンシヨンドルフ岡本の建物が存在し、右交差点の東西道路を東方から西方へ進行する車両の運転者にとつて、自車左前方への見通しは全く不良であるし、一方、右交差点の南東側道路を右交差点内に進入しようとする車両の運転者にとつても、自車右前方への見通しは全く不良である。

右交差点附近に水銀灯が設置されており、夜間でも、右交差点内は比較的明るい。

なお、本件事故当時の天候は晴、路面は乾燥していた。

(ロ)(a) 被告吉岡は、本件事故直前、被告車を時速約五〇キロメートルの速度で運転し、本件交差点の東西道路を東方から西方に向け進行し、右交差点東入口附近に接近したが、同人は、自車左前方の見通しが全く不良であるのに、深夜のこと故自車左方から右交差点に進入して来る車両はないであろうと軽信し、従前速度のまま自車を右交差点に向け進行させた。そして、同人は、自車が右交差点東入口附近に達した時、突然自車左方(右交差点の南東側通路)より右交差点内に進入して来た原告車を認め、衝突の危険を感じ、とつさに急ブレーキを掛け、ハンドルを右に切つたが間に合わずやや右斜前方約一二・三メートル進行した右交差点の中央部附近で、自車の右前部附近と原告車の右後部附近とが衝突し、本件事故が発生した。

(b) 右認定各事実を総合すると、本件事故は、被告吉岡の制限速度遵守義務違反、自車前方、特に左前方の安全確認義務違反の過失により惹起されたというべきである。

(ハ)(a) 原告京介は、本件事故直前、原告車(友人が後部座席に乗車)を時速約五〇キロメートルの速度で前照燈を下向きにして運転し、本件交差点の南東側道路を右交差点に向け南東方から北西方に向かつて進行し、右交差点南東側入口附近に接近したが、深夜のことで交通量も少く右交差点の東西道路を走行している車両はないであろうと軽信し、右交差点の東南側入口の約一五メートル手前で自車の速度を時速約二五キロメートルに減速した。しかし、同人は、右交差点の右入口附近に前記認定の一時停止の標識表示が存在し、容易にこれを認め得るのに、右地点で一時停止せず、しかも、自車右前方の安全を十分に確認せず、そのままの速度でしかも前照燈を下向きにしたまま自車を右交差点内に進入させた。そして、同人は、右交差点に進入した直後、自車右方から進来する被告車を初めて認め、衝突の危険を感じ、とつさに急ブレーキを掛けたが間に合わず、前方約五メートル進行した右交差点の中心部附近で、前記認定のとおり原告車と被告車が衝突し、本件事故が発生した。

(b) 右認定各事実を総合すると、本件事故には、原告京介の一時停止義務違反、右前方の安全確認義務違反の過失も寄与しているというべきである。

(ニ)(a) 右認定説示に基づくと、被告吉岡と原告京介との本件過失割合は、被告吉岡五五パーセント、原告京介四五パーセントと認めるのが相当である。

(b) そこで、原告京介の前記認定にかかる本件損害金一億〇四〇六万五七九七円を右過失割合で所謂過失相殺すると、その後において原告京介が被告らに請求し得る右損害額は、金五七二三万六一八八円となる(円未満四捨五入。)。

(c) 原告靖彦と同京介との身分関係は前記認定のとおりであるところ、原告京介の本件事故に対する前記過失は、所謂被害者側の過失として、原告靖彦の本件損害額の算定に当たつても斟酌するのが相当である。

そこで、原告靖彦の前記認定にかかる本件損害金五六〇万円を原告京介についての前記過失割合と同一割合で所謂過失相殺すると、その後において原告靖彦が被告らに請求し得る右損害額は、金三〇八万円となる。

5  損害の填補

原告京介が本件事故後自賠責保険金合計金一七五七万円を受領したことは、同人において自認するところである。

そこで、右受領金合計金一七五七万円は、同人の本件損害に対する填補として、同人の前記損害金五七二三万六一八八円からこれを控除すべきである。

右控除後の右損害額は、金三九六六万六一八八円となる。

6  弁護士費用 原告京介分金三〇〇万円

原告靖彦分金 三〇万

右認定の本件全事実関係に基づくと、本件損害としての弁護士費用は、原告京介分を金三〇〇万円、同靖彦分を金三〇万円(いずれも同人らの主張する金額)と認めるのが相当である。

第四結論

以上の全認定説示を総合すると、原告京介は、被告らに対し、連帯して本件損害合計金四二六六万六一八八円及び弁護士費用金三〇〇万円を除いた(この点は原告自身の主張による。以下同じ。)内金三九六六万六一八八円に対する本件事故日の翌日であることが当事者間に争いのない(以下同じ)昭和六二年九月六日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを、原告靖彦は、被告らに対し、連帯して本件損害合計金三三八万円及び弁護士費用金三〇万円を除いた内金三〇八万円に対する昭和六二年九月六日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを、各求める権利を有するというべきである。

原告らの本訴各請求は、右認定の限度で理由があるが、その余は理由がない。

(裁判官 鳥飼英助)

事故目録

一 日時 昭和六二年九月五日午前零時三五分頃

二 場所 神戸市東灘区西岡本一丁目一五番一四号先市道山手幹線上信号機の設置されていない交差点内

三 加害(被告)車 被告会社保有・被告吉岡運転の事業用普通乗用自動車(タクシー)

四 被害(原告)車 原告京介運転の自家用自動二輪車

五 事故の態様 被告車が、本件事故直前、本件交差点の東西道路を西進し右交差点内に進入したところ、折から原告車が、右交差点のほぼ南北に通じる道路を北進して来て、右両車両が、右交差点内で出合頭に衝突した。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例